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大阪高等裁判所 昭和39年(ラ)127号 決定

理由

民訴六八七条の不動産引渡命令に対する抗告事由としては、右引渡命令手続における固有のかしのみを主張することができ執行要件のけん欠その他競売手続における実体上、手続上のかしを主張することは許されないと解するのが相当である。その理由は次のとおりである。すなわち、

右引渡命令は、競落代金を全額支払つて競落物件の所有権を取得した競落人をして簡易迅速に右物件の占有を得させることを目的とするものである。それは、基本の、不動産の換価による金銭債権の満足を目的とする競売手続の一環として、これに付随するものではあるが、他方、すでに競落許可決定が確定しこれに対して民訴六七二条所定の実体上、手続上の事由に基づく不服申立てをなすことが一切許されない段階において発せられるものである。このような目的、性格の引渡命令が、すでにいわばたち切られた競売手続における実体上、手続上のかしを承継することは、競売手続の構造上到底考えられないのである。したがつて、引渡命令に対する抗告事由としては、前記のとおり、引渡命令手続における固有のかしのみに限定すべきものといわなければならない。

これを本件についてみるに、抗告人の主張は要するに、大阪高等裁判所昭和三二年(ネ)第九〇三号不動産売買予約無効確認等請求控訴事件の確定判決の判旨に照らし、本件不動産は本件強制競売の対象となり得ないものであるから、これについてなされた右競売申立ては不当であり、本件競落人池田清治がこれを競落してもその効力を生ずるに由ないというにあつて、まさに競売手続における実体上のかしを抗告事由とするものにほかならないから前段説示に照らし、右抗告事由は理由のないものというべきである。

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